視覚障がいをもつ人々と共に歩んでくれる盲導犬はたくさんの人の愛情とご協力、ご支援によって育っています。
盲導犬の候補となる子犬は、盲導犬協会所有の「繁殖犬」から産まれてきます。犬の1回あたりの出産頭数は平均5~6頭です。兵庫盲導犬協会では年間約20頭の盲導犬候補犬が誕生しています。誕生から約60日間は母犬やきょうだい犬と共に生活し、すくすくと育ちます。同時に、子犬の育児に人間が関わることで、子犬は人間に対して友好的に接することができるようになります。
生後60日頃になると、仔犬たちは1歳になるまでのおよそ10ヶ月の間「パピーウォーカー」とよばれるボランティアの家庭で愛情に包まれながら育ちます。この時期に色んな場所に出かけ様々な経験を積むことで犬の「社会化」につながります。
1歳を迎え、協会に子犬たちが帰ってくると盲導犬の訓練がはじまります。
盲導犬としての適性があるかどうかを様々な状況下で審査すると同時に、一頭一頭の個性や特性を把握します。
盲導犬としての適性が有ると判断された犬は、盲導犬訓練士の手によって、その個性や特性に応じた訓練方法で訓練されます。
盲導犬としての適性が無いと判断された犬は、「キャリアチェンジ犬」としてキャリアチェンジ犬ボランティアへ引き取られます。
基本訓練とは、犬に指示を出し、その指示通りの動作をさせる基本的な訓練です。できたらしっかり褒め、間違ったらきちんと正しい事を教えることを繰り返すことで、犬は正しい動作を学習し、同時に人間との信頼関係を深めてゆきます。
誘導訓練とは、障害物を回避、段差や交差点を知らせる、といった視覚障がい者を安全に導くために必要な動作を犬に理解させる訓練です。
誘導訓練の際には「ハーネス」(右写真)を犬に装着します。
視覚障がい者は、進む・止まる・左右に曲がるといった動作を、ハーネスを通して正確に感じ取ることができます。
コーンやバーを使った基礎的な障害物回避から、街の中で行う実践的な訓練など様々な状況を想定した訓練を行います。
最終段階では、訓練士がアイマスクを着用して歩行動作を確認します。
障がい者が扱いやすく、且つ安全に歩行できるかどうか、一つ一つの動作確認は入念に行われます。
また、誘導訓練の中では、使用者の指示が危険につながると判断した場合、犬がその指示に従わず、安全を優先した行動をとる「不服従訓練」も行います。
たとえば使用者が道路を横断する際に、犬はその指示に従わないことにより使用者の安全を確保するのです。
共同訓練とはその名の通り、使用者となる視覚障がい者と犬とが共同で行う訓練です。
視覚障がい者は犬の世話の仕方から学び、犬とのコミュニケーションを通して信頼関係を深めてゆきます。
盲導犬歩行技術の習得はもちろんですが、使用者として必要な知識・マナーなども学びます。最初はぎこちなかった視覚障がい者と犬の関係も、日数を重ねるにつれて次第に心が通い合うようになります。
最終試験に合格すると、晴れて「盲導犬」と「使用者(ユーザー)」として歩みはじめます。
通勤、買い物、旅行など盲導犬は常にユーザーと一緒に過ごします。定期的に歩行指導員がユーザーへフォローアップを行い、生活状況の変化に応じた指導を行いながら安全な歩行を維持していきます。
当協会では、盲導犬が10歳頃になると引退します。ハーネスを外し、引退した後はリタイア犬受け入れボランティアの家庭へと引きとられ、穏やかな余生を過ごします。
たくさんの人に
愛されているんだね